糖尿病の食事療法

 糖尿病(ここでは生活習慣病である2型糖尿病)の治療の基本は、なんといっても食事療法です。日本人の糖尿病は必ずしも体重過多とは関係しないので、糖尿病患者さんが全員すなわち食事過多、カロリー過多というわけではありません。
しかし、いま現在の処理能力を超したintakeがつづけられているからこそ、血液中に糖分がダブついて血糖値が高くなり、それが腎臓からあふれて尿糖として出てくることにまちがいはありません。
処理能力以上のinputがつづけられ、からだに糖分があふれ、身体が糖化され錆びついて老化がすすむこと、これが即ち糖尿病です。
 そこで食べ方を見直して処理能力以上の過剰な負荷を減らし、無理を強いられて疲れていた処理の作業工程を休ませてあげて、その能率・能力を回復あるいは向上させる方向へ導くのが食事療法です。

 糖尿病の食事療法は、従来、摂取した食べ物の総カロリーで論じられてきました。しかし、結局のところ実際にわたしたちの血糖値を上下させているのはその総カロリーではなく、糖質(ごはん、パン、麺類、いも類、かぼちゃ、大豆以外の豆類、バナナも含む果物、お菓子)の摂取です。
処理能力以上にinputがつづけられているのは、肉や魚などのおかずを含めた食べ物の全体量ではなく、問題の核心は糖質だったのです。

 昼食を軽くざるそばだけですませ、その食後2時間経って受診された方に、受診時血糖値を測定すると、その血糖値が高くて、驚かれることがしばしばあります。
ざるそばは、タンパク質も脂肪も含まず総カロリー量は多くありませんが、ほとんど糖質そのもので、それが血糖値を高くしますし、このようにほかにおかずを摂らずに空腹時に単独で糖質を摂取すると、一層血糖値が上がりやすいことが知られています。これらは総カロリーを減らしても糖質の量に留意しなければ血糖値は良くならない好例です。
糖尿病の方は糖質の単品食いは避けるべきです。
 総カロリーにとらわれずに、糖質の量と摂取の仕方を見直していく食事療法
が「糖質制限」です。
糖質制限は3カ月つづけると効果が実感されます。
その確実な実効性ゆえ、糖質制限を一種の医療行為ととらえる向きもあります。
すでに血糖値をさげる薬(とくにSU薬やSGLT2阻害薬)を飲んでいる方の場合は、かならず医師と相談してからはじめてください。

 糖質制限は、およそ以下の方々に勧められます。
*  年齢は65歳以下であること。
*  HbA1cがいつでも8%以上の方。
*  あきらかな肥満、例えばBMIが男性では30以上、女性では28以上の方。
*  食後高血糖を是正したい場合。 などです。

 糖質制限による食事療法は、具体的には、まず自分が摂っている主食の量を知ることからはじめます。
ふつうに盛ったごはん茶わん一膳は150gですが、自分のごはん一膳を計ってみて、その自分の量を半量にすることから始めます。
サンドイッチならトースト2枚でつくっていたならば、1枚にします。
主食を減らした分のおかずは、とくに野菜、海草、キノコを意識して多く摂取します。食物繊維の多いおかずを心掛けます。
献立を洋風から「和食」へ偏向させます。
果物の摂りすぎには注意し、果物は朝の食後に食べます。果物や菓子類の単純糖類は大敵です。ものたりない食事がわりのお菓子はやめます。

通常一日の糖質摂取総量は250~300gですので、それを半量にします。
3食のうちの1食分での糖質の量は40~50gが目安です。食事に含まれる糖質の量はほとんど主食の量で規定されます。それぞれの主食に含まれる糖質の重量%は概略、米飯40%、パン50%、ゆで麺20%と考えます。
ごはん50gに含まれる糖質の量は約20gです。食パン6枚切一枚60gは約30g、ゆでうどん1玉240gには約48gの糖質が含まれます。
食品のなかに含まれる糖質の量は、食品交換表第7版( 糖尿病食事療法のための食品交換表日本糖尿病協会・文光堂 )の104ページを参照ください。
1日3食すべて糖質制限ではつらいという方では、夕飯のみに集中して実行します。 夜のみ糖質制限でも持続すれば、効果はじゅうぶん現れます。かえって夜のみにするくらいの方が、導入しやすく持続しやすく、程度としても最も適当かも知れません。また、白米に替えて、玄米、麦飯、イモ・根菜類など、食物繊維の多い穀物の利用も積極的に勧められます。
 効果は、まず食後高血糖が改善され、つぎに空腹時血糖値が良くなり、それらにともなってHbA1c値が低くなってきます。自己血糖測定(SMBG)をされている方は実感されると思います。減量効果もみられます。
体重が減るのは、過剰な糖質負荷がなくなって高インスリン血症が是正され、余剰な糖分がインスリンの作用によって脂肪組織へ転換されていたのがやむからです。高かった中性脂肪の値も大抵よくなります。

 食品交換表第7版の28ページを見るとあきらかですが、これまでの食事療法は総カロリーを調節するために、主食も副食も減らすやりかたです。
糖質制限による食事療法は、もっとターゲットをしぼって、ヒトの血糖を上下させている糖質それのみに着目する方法といえます。

 ダイエット効果が得られますので糖質を制限することに慣れると、ときにはこれにのめり込んでしまう人があり問題です。体重が再び増えることが怖くなり元のようには食べられなくなったり、体重を減らしたことで身体がすべて完全に健康になったと思い込んでしまったりする場合です。
何事もやり過ぎることは良くありません。「ほどほど」が大切です。
糖質制限を徹底するとやせますが、それでひどくやせた方の肌はしおれたようなつやの失われた独特な感じになり、けっしてきれいではありません。
肥満症の是正が目的の場合には、体重が3キロ腹囲が3㎝減ればひとまず成功ですし、体重が10%減少したらそれでもう十分。それ以上とは考えずにその維持にこころを配ります。

 アルコールは1g7kcalに相当しますが、他の栄養素とことなり額面どおりには必ずしも利用されません。アルコールは、糖質制限という意味では糖質を含まない蒸留酒(焼酎、ウィスキー)が適当です。醸造酒ではワインは血糖値を上げにくいといわれています。
アルコール(エタノール)代謝は、糖代謝と同じく肝臓で行われますが、糖代謝に優先してなされ、糖新生を抑制して血糖値の安定性を損ない、糖尿病の治療中で糖の代謝をなめらかにしようとしている状況では障害となるものにはちがいありません。また、アルコールの摂取量が多いとその代謝過程で中性脂肪の合成が促進され、アルコール性脂肪肝やいわゆるメタボを招来します。

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